人民元は中華人民共和国の通貨で、依然として厳しい管理体制の面がありますが近年では決済規模の急拡大など国際的な地位が確固たるものになりつつあります。
1.人民元の切り上げ
人民元の為替相場に欠かせない話題となるのが「人民元の切り上げ」です。現在の人民元の為替レートが継続して高成長し続けている中国経済力からみて安い!という判断が強まると現行の為替制度に対して圧力が高まります。特にアメリカは人民元レートが割安になると米国企業と対中国での価格競争が低下し、結果米雇用へ懸念されるということを考えて貿易赤字最大の相手国である中国に人民元の切り上げを強く要求します。
2.これに対する中国とアメリカの動きは
中国の輸出企業への利益を守りたい思いがあるので、その要求をかわし続けていましたが2005年7月に人民元の切り上げを実施ししています。しかしアメリカからの人民元が不当に安く操作しているという批判があり、ついにはその批判をかわしきれず2010年6月には人民元レートの弾力化の発表をしています。それ以降は緩やかですが人民元対ドルでは人民元高・ドル安に進む傾向にあります。
3.人民元切り上げ→人民元の変動幅拡大
中国人民銀行は2012年4月、人民元の対ドル相場の1日の変動幅について±0.5%だったのを±1%に拡大することにしました。その目的としては、変動幅が拡大されることで人民元切り上げに対してアメリカなど国際社会から受ける批判をかわすということ、そして柔軟性のある相場をという判断もあったようです。2012年12月の日本の政権交代以降は円安主導で人民元は上昇し、2011年半ばに1人民元=12円程度まで下落した後は、16円台まで反発しています。
4.今後の人民元はどう動く?
5年や10年という長期の視点で見たときには、管理制度の厳しさもあることから規制緩和に向けてのハードルは高く、人民元取引がさらに自由化され拡大するということは考えにくいでしょう。ただし人民元の国際的な価値は高まりを見せると予想されます。
中国経済はこれまでのように高成長するということはないでしょう。輸出主導型からの脱却を図るという方針も中国政府は示しています。輸出企業を保護するというこれまでのスタイルもだんだんと後退してくる可能性もあります。経済成長のスピードが衰えたと懸念されているとしても、先進国と比べた場合は高成長が維持されることになります。
そういったことを背景にして、長期的に見た場合には人民元が継続的に上昇するかもしれないという可能性を考えても良いでしょう。人民元の国際化という部分でも人民元高のほうが有利になる可能性もあります。