子育て中の親を支援するため、子どもが0歳~中学生を卒業するまで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)国から給付されるのが「児童手当」です。
支給は毎年6月(2~5月分)、10月(6~9月分)、2月(10~1月分)の3回で、指定の銀行口座に振り込まれます。ただし口座は子どもを育てている保護者名義にする必要があり、子ども名義の口座では受給できないといった決まりがあります。
また、児童手当を受け取れるのは原則請求した翌月分から。さかのぼっての請求はできないので、出生届を提出する時に児童手当の申請も一緒に行うのが確実です。
さて、この児童手当ですが、一定以上の年収があると給付額が減ったり対象外になったりしてしまうこと、そして、この所得制限に対する議論が起きていたことをご存じでしょうか?
現在の児童手当は、子どもが0歳から3歳未満までは月1万5,000円、3歳から小学校修了前までは月1万円(第3子以降は1万5,000円)、中学生には月1万円が支給されています。
ただし、収入(所得)が多いと「特例給付」として給付額が子どもの年齢に関わらず月5,000円になり、さらに年収が多くなると給付自体がなくなります。
以前は、どれだけ高収入でも児童手当自体はもらえていました。しかし、2021年の改正児童手当関連法により、2022年10月から特例給付(月5,000円)を受けられる収入の上限が決まり、それ以上の収入のある世帯は給付対象外になったのです。
現行の制度をまとめたものが下記の図です。
例えば子ども2人と年収103万円以下の配偶者がいる場合、年収960万円程度を上回ると通常の支給額ではなく特例給付になり、年収1,200万円程度を上回ると児童手当はもらえなくなります。
この改正に対して大きな反発が生まれていた中、急務である少子化対策の一環として岸田首相は
①児童手当の所得制限を撤廃
②給付期間を高校生まで延長(月1万円)
③第3子以降の給付額を月3万円に倍増
の3つを、2024年10月を目指して実行すると表明しました。
これにより児童手当が大幅拡充され、収入の違いによる不公平感もなくなることになります。
拡充後は、3人の子どもがいる家庭では単純計算で受取総額が最大648万円増になります。ただし今の運用だと、1番目の子ども(長子)が大学1年(19歳)になると第1子から外れ、2番目が第1子、3番目が第2子の扱いになります。子どもが3人いても、三つ子などでない限り月3万円が支給される期間は限定的だということは、理解しておく必要があるでしょう。
また、現行制度では児童手当の支給は中学生まで。それと入れ替わるように「扶養控除」が受けられるようになります。扶養控除が適用されると、子どもが16歳から19歳までの間は38万円(住民税は33万円)、19歳から23歳までの間は63万円(住民税は45万円)の控除が受けられます。
しかし、児童手当が高校生までの3年間延長されることで、この扶養控除が見直される可能性が出てきています。もしそうなると、児童手当が増えても実質的にマイナスになるケースもあると指摘する声もあります。そのほか、この児童手当の拡充に対する財源をどうするのか、社会保険料の増額など別の部分での負担が増えることがないのかも、気になるところです。
このように、児童手当の拡充は子育て世帯にとっては大変うれしいニュースですが、懸念点がないとはいえません。最新の動向をチェックしていく必要があるでしょう。