親が高齢になってくると気にかかるのが、お墓のことです。今は先祖代々のお墓を親が管理しているけど、次は自分の番。しかし、「場所が遠くてお墓参りに行くまでが大変」「お墓の管理をする時間がとれそうもない」といった不安を抱えているケースもあるでしょう。そんな人は、「墓じまい」を検討してみても良いかもしれません。
墓じまいには、大きく分けて「改葬」と「墓処分」の2つの方法があります。「改葬」とは、通いやすい場所にお墓を移動させる、いわばお墓のお引越しのことです。お墓が遠方にあって管理しづらいという場合には、こちらを選ぶことになります。一方、「墓処分」とは、お墓をなくし、永代供養墓にするなどして、お墓自体を解体してしまうことを指します。承継者がおらず、お墓を片づけたいという場合には、こちらが選択肢になるでしょう。
どちらの方法を選ぶにせよ、まずは、現在のお墓の管理者へ、墓じまいの意思を伝えるところから始めましょう。寺社が管理している墓苑の場合には住職に許可をもらう必要がありますが、その際には檀家を離れる費用として「離壇料」が請求されます。離壇料の金額は寺社やお墓の規模などによっても変わってきますが、5万円~20万円ほどが一般的な目安となります。
墓じまいのうち「改葬」を選んだ場合は、まず新しいお墓を確保して、新しいお墓の管理者から「受入証明書」を発行してもらいます。次に、現在のお墓がある市区町村役場で「改葬許可申請書」を入手します。「改葬許可申請書」では、「誰の遺骨を」、「どのような理由で」、「どこからどこへ移動するのか」といった事項の記入が必要となります。また、現在のお墓の管理者からは「埋葬証明書」を発行してもらいましょう。
3つの書類が揃ったら、現在のお墓がある市区町村役場に提出し、「改葬許可証」を発行してもらいます。「改葬許可証」を入手したら、現在のお墓の管理者に提示し、遺骨を取り出し移動させます。仏式の場合には、お墓から遺骨を取り出す際に「閉眼法要」を行います。これは僧侶が読経し、墓石に宿る仏様の魂を抜くもの。法要後に遺骨を取り出し墓石を除去して更地に戻します。それが終わったら、新しいお墓の管理者に「改葬許可証」を提示し、遺骨を新しいお墓に埋葬します。
以上が「改葬」を選択した場合の手順です。
一方で「墓処分」を選択した場合には、「改葬許可証」を必要とする手続きが不要となり、基本的には「受入証明書」「改葬許可申請書」「埋葬証明書」という3つの書類を入手する必要もありません。ただし、「改葬許可申請書」が必要な場合もあるため、現在のお墓の管理者や霊園への確認は怠らないようにしましょう。また、お墓を別の場所の永代供養墓に移す場合には、「改葬」と同様の手順が必要となります。
墓じまいにかかる費用は30万~300万円程度とも言われ、その金額にはかなりの幅があります。特に「改葬」となると、新しいお墓の建立費用や移転先の寺院への永代使用料がかさみます。
親が高齢になってきたら、兄弟や親族などと「墓じまい」という方法も含めてお墓をどう管理していくのか、しっかりと話し合いましょう。