マイナス金利政策が市場にどう影響するのか注目されてきましたが、結局のところ銀行の収益を圧迫したことで銀行株は下落し、混乱が株価を低下させて円を高くさせている状況です。
日銀は円をマイナス金利にすれば日本の金利は低下し、日米金利差は拡大となってドル高円安になることを見込んでいたはずです。そのため現状は日銀にとって、大きな誤算だったと言えるでしょう。
日銀の当初の考え
まず米国の国債は2%の金利で日本の国債は0.5%の金利でした。そこで日銀は、日本の金融緩和実施で米国の国債利回りは2%に対し日本の国債の利回りを0%にすれば、日本の投資家は日本の国債ではなく米国債に投資して2%の金利を稼ごうとすると考えました。
投資家が円をドルに交換し米国債に投資するようになれば、結果としてドル高円安になると考えたのでしょう。しかし日本の投資家が米国債を大量購入しようとすれば、米国債の価格が上がるため米国の金利も低下することになります。
米国の長期金利の推移への依存傾向
現在の米国10年国債の利回りは2%弱の状況です。マイナス金利を導入したのに日米金利差はさほど拡大せず、円安圧力をかけるには至っていません。
米国の長期金利に上昇圧力がかからなければ日本の金利が下がっても、日米の金利差は拡大しないためドル高に弾みがつきません。
内外金利差を用いた為替レートの方向性を予測する考え方は、平均的な為替レートの期待が不変であるという前提でのことです。
現在の為替レートは金利差だけでなく将来への期待にも大きく依存するといえますが、ドル円レートの平均水準は必ず一定というわけではありません。
消費税引き上げで変化があるのか
これまで日本は安倍政権のアベノミクスの効果で、期待インフレ率は上昇、日米金利格差も拡大して円安ドル高に進んでいました。しかし期待インフレ率が低下したことで日米金利格差は縮小を見せ、安倍政権誕生前の円高ドル安の流れに戻りつつあるとも考えられます。
安倍政権は消費税10%への引き上げを予定しており、それによって国内消費は減速、結果としてデフレ圧力を増大させます。一方、海外投資家の円に対する安心感を増大させ円高の流れを強固なものにするでしょう。
現状から抜けるために必要なことは?
日米長期金利差は、米国の長期金利の推移に左右される傾向が強いことから日米金利差を拡大させるのは米国 10 年国債のレートが上昇していくことが必要です。
ドル円レートを左右している内外金利差は、日銀の金融政策だけでなく米連邦準備理事会(FRB)の金融政策に大きく依存すること認識させられます。