老後の生活資金の1つ「公的年金」。20歳から加入義務が発生し、10年以上保険料を納付することで、原則65歳から一生涯受け取ることができます。この年金は、離婚した場合「年金分割」と言う制度で、分けることができます。ただし、分割できる年金の種類や一定の条件があります。どんな制度なのか解説します。
年金分割できる年金の種類や条件をチェック!
公的年金には、20歳以上60歳未満の全ての人が加入する「国民年金(基礎年金)」と会社員などが加入する「厚生年金」の2つがあります。このうち年金分割できるのは、「厚生年金」のみで、自営業者など、国民年金しか加入していない人からの分割は行えません。分割の対象は、厚生年金の受給額を決定する保険料納付記録(標準報酬)で、年金の受給金額ではありません。そのため、年金加入記録が10年以下で年金受給権がない人は受け取れません。また、分割できる期間は「婚姻期間中のみ」が対象。婚姻前や離婚後は、対象期間外となります。
この年金分割には2つの種類があります。1つ目は「合意分割」。これは、年金記録により決まる受給額が多い人から、少ない人へ分割される仕組み。どちらか一方の要求で分割することは出来ません。分割する割合も当事者同士の話し合いで決定され、割合上限は50%までと制限があります。話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所で審判や調停を行い決定されます。
年金割合の決定後に、分割割合を証明する書類等の必要な書類と申請書を年金事務所へ提出することで、分割が開始されます。年金の受け取りは、年金の受給開始年齢から分割された記録を基に計算され、自分の年金受給額に上乗せされます。すでに年金を受け取っている人は、年金分割を請求した日の属する月の翌月分から年金額が改定され上乗せされた年金を受給できます。なお、申請手続きは、離婚をした翌日から起算して2年を過ぎると請求できません。前述したとおり話し合いをした後、申請をすることになるので、その期間を念頭に置いて手続きする必要がありそうです。
専業主婦(夫)だけが利用できる「3号分割」
「3号分割」は、合意分割と違い相手の合意は不要です。申請できるのは、結婚している間は、会社員などに扶養されていた配偶者(国民年金の第3号被保険者と言う)のみ。原則、離婚が成立した日の翌日から2年以内に請求手続きすればOKです。また、分割割合の話し合いについても不要で、年金加入記録の2分の1を受け取れます。ただし、2008年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間があることが必要で、分割される相手が「障害厚生年金」を受給している場合には、利用できません。
年金は、一般的な金融資産と同じように、結婚している間に築いた「共有財産」と扱われ、2人で分け合うことができます。ただし、申請期日までに手続きをしないとその権利を失います。公的年金は、一生涯受け受け取れるお金です。少しでも増やせれば、その分もらえる金額が大きくなります。受け取り損ねてしまわないように、いざという時の知識として覚えておきましょう。