生命保険での運用ってどうなの?

  • LINEで送る

生命保険業界では2017年4月に標準利率が引き下げとなったことで、それぞれの保険会社は生命保険に適用する予定利率も引き下げることに…。この背景によって、今後、生命保険で運用することは難しいのか、それともまだメリットはあるのかを確認してみましょう。

 

Step1.標準利率引き下げの背景

2016年2月に日本銀行のマイナス金利政策が導入されたことによって、国債の利回りは低下しました。保険会社は契約者から預かった保険料から一部を将来支払う保険金に備えて運用していますが、主に国債で運用していたことによって運用環境は悪化し、安定した運用先を確保することが困難となりました。利回りの低下によって、金融庁は保険設計に必要な標準金利である標準利率を1.0%から0.25%という史上最低利率に変更しました。標準利率が低下したことで生命保険に適用される予定利率も低下し、結果として貯蓄性の高い保険商品の保険料は値上げとなりました。保険料が値上がりすることによって運用利率は低下することになります。

Step2.標準利率と予定利率の引き下げに影響する保険商品

保障を重視した医療保険やがん保険など、掛け捨て部分が多い保険は影響が少ないものの、将来受け取る金額が確定している貯蓄性が高い保険商品は保険料が高くなり利回りが低下します。養老保険、終身保険、個人年金保険、学資保険などが影響する保険商品としてあげられますが、標準利率が改定される前に既に販売を中止している保険会社もあります。今後保険を使って運用することは、標準利率の改定によって難しくなることは事実です。しかしそれだけで判断せず、税控除なども踏まえて検討する必要があります。

Step3.保険金などを受け取ったときの税金について

保険金を受け取った場合には、入院給付金など非課税になる給付金を除くと、所得税、贈与税、相続税のいずれかの課税対象になります。保険金の種類や契約者と受取人、被保険者の関係によってどの税金が課税されるかは異なりますが、基礎控除や特別控除などで税金がかからない場合もあります。税金の種類によっては受取額に大きな差が生じる可能性もありますので注意しましょう。

3-2.所得税が課税される場合

所得税の課税対象となるのは、保険料負担者と保険金受取人が同一人の場合です。満期保険金等を一時金で受領した場合は、一時所得になります。一時所得の金額は、満期保険金以外に他の一時所得がなければ保険金総額から払込保険料額を差し引き、さらに特別控除額50万円を差し引いた額です。課税対象はこの額の2分の1の金額です。満期保険金を年金で受領した場合には公的年金等以外の雑所得になります。雑所得の金額は年金額から払込保険料額を差し引いた金額です。ただし年金を受け取る際には所得税が源泉徴収されます。

3-3.配当金等を受け取ったとき

契約期間中に配当金を受け取った場合には支払保険料から控除し課税されません。保険金と同時に受け取る配当金は保険金額に含めて一時所得として課税されます。

Step4.生命保険料控除による運用への影響

さらに生命保険で運用を考える場合、年末調整や確定申告の際の所得控除の1つである生命保険料控除が大きく関係します。ただし平成24年1月1日以後の契約分(新制度)と、平成23年12月31日以前の契約分(旧制度)では適用控除額が異なりますので注意しましょう。

4-2.生命保険料控除で控除される額

具体的にどのくらいの所得控除効果があるのか考えた場合、新制度の生命保険料控除は、一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料という3つの控除枠があります。一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料に対して年8万円超ずつ支払っている場合には、控除額はそれぞれ4万円ですので合計して12万円控除を受けることができます。住民税の場合にも、それぞれ控除が適用され、最大7万円まで控除されます。旧制度の場合には、介護医療保険料ではなく、一般生命保険料と個人年金保険料の2種類です。控除額はそれぞれ所得税が最大5万円、住民税が3万5千円です。全体の所得控除限度額は、所得税が10万円、住民税は7万円となっています。なお、契約日が平成23年12月以前の旧契約に該当する場合でも、平成24年1月以降に契約を更新した場合、他にも特約を中途付加した場合には新制度の対象になりますので注意しましょう。

4-3.新制度で安くなる税金の金額

これから生命保険の契約をした場合には新制度での控除額が適用されますが、例えば年間保険料8万円超で所得税の税率が10%の場合で考えてみます。新契約の場合には年間保険料が8万円までなら金額に応じた控除額が減額され、8万円を超えた場合の控除額は一律4万円です。年間保険料が8万円超だと、安くなる所得税額は4万円×税率10%分ということになり4,000円です。さらに住民税も生命保険料控除がありますが、年間の支払い保険料が5万6,000円超の場合の住民税の保険料控除額は最高2万8,000円で税率は一律10%です。同時に住民税も2万8,000円×10%で2,800円安くなると考えられます。

4-4.どれだけ税金が軽減されるのか

この生命保険料控除によって税負担が軽減されると、年末調整で支払った税金が還付されることになります。例えば新制度で年間保険料8万円超支払った場合、課税総所得が195万円超330万円以内の人なら、所得税軽減額は4,000円、住民税軽減額は2,800円となり、合計で6,800円税金の負担が軽減されます。課税総所得330万円超695万円以内の人なら、所得税8,000円、住民税2,800円が控除されて10,800円が軽減されることになります。

4-5.バランス良く加入することが重要

ただし一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料に対してバランス良く加入することが制度を上手く活用するポイントになります。1つの領域にだけ年間8万円以上保険料を支払っていても所得控除限度額は一定になるため、恩恵を最大限に生かすことができません。生命保険控除の対象となる保険商品に対して、年間支払保険料が8万円超の条件で加入することが条件となります。資金効率だけで考えた場合には、年間支払保険料8万円を大幅に超えてしまう加入の仕方は避けた方が良いでしょう。

Step5.予定利率だけが運用利回りではない?

上手くバランスを調整しながら3つの領域の保険に加入していくことがポイントになるのですが、死亡保障や学資保険などは一般生命保険料の領域となり、医療保険やがん保険は介護医療保険料、条件を満たす個人年金保険は個人年金保険料に該当します。標準利率の改定によって個人年金保険の保険料も多くの場合変更され、中には扱い自体を取りやめている保険会社も多くあります。ただし払込保険料は将来の年金として戻ってくる貯金代わりにできる保険で、さらに毎年一定額を所得税から軽減させることができます。利回りという部分で見た場合、個人年金保険料控除の領域に該当するのは個人年金保険に加入するしかありませんので効果としては大きいと考えられます。支払った保険料総額と所得控除なども踏まえて考え、運用に適しているかをトータルで考えてみることも必要です。

まとめ

とはいえ税金のことはわからないことだらけです。ただでさえ生命保険は仕組みが複雑でわかりにくいと思う人が多い中、税控除まで加わると頭が混乱してしまって理解できないということもあるでしょう。もし将来必要になる資金に備えて、生命保険で運用を検討している場合などはお金のセミナーに参加してみてはいかがでしょう。分かりにくい保険のこと、運用のこと、税控除のことなど、様々な部分から本当に運用に適しているのか、自分に合った運用方法なのかを判断することができるはずです。専門家の話を聞いてから判断して見ても良いでしょうし、今後必要になる知識を習得できること間違いなしです!

  • LINEで送る